表5.白血病に用いられる主な薬物療法薬
1.代謝拮抗薬
1)ピリミジン拮抗薬
シタラビン (Ara-C)
エノシタビン(behenoyl Ara-C, BHAC)
シタラビン・オクフォスフェート(YNK-01)
ペントスタチン
ネララビン
アザシチヂン
デシタビン
2)プリン拮抗薬
6-メルカプトプリン (6MP)
3)葉酸拮抗薬
メソトレキセート (MTX)
2.アントラサイクリン系抗生物質
ダウノルビシン (DNR)
イダルビシン (IDR)
ドキソルビシン (DXR)
アクラルビシン (ACR)
3.アルキル化薬
サイクロフォスファミド (CY)
ブサルファン
クロラムブシル
ナイムスチン (ACNU)
ラニムスチン (MCNU)
4.植物アルカロイド
1) ビンカアルカロイド
ビンクリスチン (VCR)
ビンデシン (VDS)
2) ポドフィロトキシン
エトポシド (VP-16)
5.ステロイドホルモン薬
プレドニソロン
デキサメサゾン
6. 分子標的薬
レチノイン酸 (ATRA)
テミバロテン(Am80)
イマチニブ
7.その他
ミトザントロン (MIT)
ハイドロキシウレア
ソブゾキサン (MST-16)
アスパラギナーゼ
亜砒酸
インターフェロン (IFN)
レナリドマイド
シタラビン (Ara-C)(キロサイド)は急性骨髄性白血病には必須の第一次選択薬です。副作用は骨髄抑制や嘔気・嘔吐などです。急性骨髄性白血病の地固め療法としてAra-C 大量療法を行うことが一般的になりました。エノシタビン(behenoyl Ara-C, BHAC)(サンラビン)は、わが国で開発されたAra-C 誘導体で、Ara-C を不活化する分解酵素に抵抗性を示し、血中半減期が長く嘔気・嘔吐などの副作用が少ない薬です。6-メルカプトプリン(6MP)(ロイケリン) は急性骨髄性白血病の寛解導入療法薬として重要であり、急性リンパ性白血病においても必須の維持療法薬です。副作用は骨髄抑制や肝障害などです。葉酸拮抗薬メソトレキセート(MTX) は急性リンパ性白血病において、中等量〜大量を地固め療法期に、少量を維持療法期に必須の薬剤として用います。副作用は骨髄抑制や粘膜障害などです。本剤の毒性はテトラヒドロ葉酸(ロイコボリン)により中和できるため、大量を使用したあと後者によりレスキューができるという特徴があります。
抗がん抗生物質であるダウノルビシン(ダウノマイシン)は急性骨髄性白血病の第一次選択薬であり、急性リンパ性白血病にも第一次選択薬として使用されることが多い薬です。副作用は骨髄抑制、心筋障害や脱毛などです。イダルビシン(イダマイシン)はダウノルビシンよりも強い抗腫瘍活性を示し、骨髄抑制以外の副作用が少なく、Ara-C との併用による無作為比較研究により、急性骨髄性白血病に対しDNR より優れた寛解導入効果があることが報告されました。したがって、急性骨髄性白血病における第一次選択薬となりましたが、骨髄抑制作用がダウノルビシンより強いため、感染症などの合併症がおきやすく、注意が必要です。最近、ダウノルビシンを少し多めに使用すれば、イダルビシンに勝るとも劣らないという成績が出され、ダウノルビシンが復権してきました。
アルキル化薬に属するシクロフォスファミドはリンパ系腫瘍の第一次選択薬として用いられ、急性リンパ性白血病においても重要な薬です。副作用は骨髄抑制、脱毛や出血性膀胱炎などがあります。大量のシクロフォスファミドやブスルファンは骨髄移植の前処理法の主要薬剤です。
ビンクリスンは植物から抽出するアルカロイドであり急性リンパ性白血病の第一次選択薬として用いられ、急性骨髄性白血病にも第二次選択薬として使用されます。副作用は末梢神経障害や麻痺性イレウスなどです。エトポシドは急性骨髄性・リンパ性白血病に対し共に有効で、第二次選択薬として使用されます。副作用は骨髄抑制や脱毛などです。
副腎皮質ホルモンは、急性リンパ性白血病の第一次選択薬としてよく用いられています。リンパ球やリンパ系腫瘍細胞に対し、アポトーシス (計画細胞死) を誘導し、細胞融解作用を示します。副作用は糖尿病やクッシング症候群や免疫不全症などです。
その他の抗白血病薬として、ミトザントロンがあり、急性骨髄性白血病の第二次選択薬として使用されます。副作用は骨髄抑制などです。また、アスパラギナーゼはリンパ系細胞がその増殖に必要な必須アミノ酸であるアスパラギンを分解することにより抗腫瘍性を発揮し、急性リンパ性白血病の寛解導入期の第一次選択剤です。副作用は出血性膵炎、低フィブリノ−ゲン血症、肝障害などです。
活性型ビタミンAである全トランス型レチノイン酸は急性前骨髄球性白血病に対し分化誘導療法剤として著効を示し、この型の白血病の第一次選択薬です。副作用は皮膚・口唇の乾燥や肝障害やレチノイン酸症候群などですが、他の抗がん薬にくらべれば無きに等しいと言えます。テミバロテンはレチノイン酸より約10倍効力の強いレチノイドで、再発ないしはレチノイン酸に難反応性となった急性前骨髄球性白血病に使用されます。また、急性前骨髄球性白血病には亜砒酸も有効です。白血病細胞をアポトーシス死させたり、レチノイン酸と同じ様に分化誘導して細胞死をもたらします。副作用として。心臓毒性や末梢神経毒性や肝障害があるため、再発ないしはレチノイン酸に難反応性の急性前骨髄球性白血病に使用されていますが、最初から使ってもよいのではないかとの成績もあり、地固め療法期に用いられることもあります。レチノイン酸、テミバロテンと亜砒酸は急性前骨髄球性白血病には非常によく効き、お蔭でこの白血病は80%以上が治るようになりましたが、残念ながら他の白血病には効きません。「2.白血病の原因」のところで述べましたように、急性前骨髄球性白血病の病因分子であるPML/RARαに特異的に効くためです。
フルダラビンは病状がやや進行した慢性リンパ性白血病の第一次選択薬です。この薬は造血幹細胞移植のいわゆるミニ移植でも広く用いられています。副作用は骨髄抑制などです。ペントスタチンは毛様細胞白血病に用いられます。副作用は骨髄抑制などです。ネララビンは最近認可された薬でT細胞性の急性リンパ性白血病に用いられます。副作用は末梢神経毒性や骨髄抑制などです。
ハイドロキシユレアは、かつては慢性骨髄性白血病の第一次選択薬でしたが、その後インターフェロンが第一次選択薬となり、最近ではイマチニブがインターフェロンよりも優れていることが立証されて第一次選択薬になりました。イマチニブは白血病の原因となっているBCR/ABL分子のチロシン・キナーゼ活性を特異的に阻害する分子標的薬です。副作用は吐気や皮膚発疹などです。インターフェロンには、発熱、鬱病や肝障害などの副作用がありますが、慢性骨髄性白血病に対する効果は優れており、イマチニブで治せない慢性骨髄性白血病には有効な薬です。ハイドロキシユレアは副作用が比較的少なく、かつ白血病細胞を減らす効果は優れているため、白血球数の多い症例で、とりあえず白血球を減らす目的で用いられます。
アザシチジンとデシタビンは、薬としては新しいものではありませんが、最近この二つの薬が、がん化の原因の一つであるDNAのメチル化を阻害することが判り、骨髄異形成性症候群を中心に使用されて良い成績を示しています。骨髄抑制などの副作用はありますが、これまで薬の全くなかった骨髄異形成性症候群に対する新薬として、まもなく日本でも使用できるようになる予定です。
レナリナマイドは骨髄異形成性症候群で減少している赤血球を増加させる作用があり、初期の骨髄異形成性症候群、特に5番染色体長腕に欠損のある骨髄異形成性症候群に非常によく効きます。こちらもまもなく日本でも使用できるようになる予定です。副作用は血小板抑制作用と白血球減少作用です。